ひかり姫を育てるのは、万願寺エリアで活躍する若手農家たちです。藤本圭一朗さんは世界40カ国以上を旅し、日本の農業の素晴らしさを再発見して就農。品質管理や土づくりを徹底し、山田錦や黒枝豆で数々の賞を受賞しています。山田達也さんは会社員から就農し、わずか3年で10haの農地を集積。耕作放棄地を蘇らせ、地域の雇用も生み出しながら、ひかり姫のブランド化に力を注いでいます。大橋麻世さんは家族とともに移住し、澄んだ水を活かしたレタスやネギを栽培。地域との絆を大切にしながら、ひかり姫の試験栽培で高収量を達成しました。

三人に共通するのは「農業で地域を盛り上げたい」「ひかり姫を日本一の枝豆に育てたい」という情熱です。個人ではなく“チーム”として協力し合う姿に、強い未来志向を感じます。

ひかり姫は兵庫県が13年かけて開発した枝豆専用品種です。黒枝豆の王様「丹波黒」の遺伝子を94％持ちつつ、病害に強く茶斑（さび）の出にくい、美しいさやを実らせます。しかし、丹波黒と非常に似ているため、県はブランド保護のため厳しい栽培ルールを定めました。丹波黒とは1.2m以上（採種用は10m以上）離して栽培し、すべて枝豆として収穫。子実用や自家採種は禁止され、「ひかり姫」と明記して販売することが義務づけられています。

さらに中間取扱業者が種子を管理し、生産者の栽培状況を確認する仕組みまで整備。これにより“見た目の美しさ”“品質の安定性”“ブランドの信頼性”が保たれます。ただの新品種ではなく、行政・生産者・地域が一体となって守る「兵庫県認証食品」。この徹底した管理体制が、ひかり姫の価値を支えています。

ひかり姫の一番の魅力は、「食べた瞬間に違いがわかる」味です。丹波黒が“ホクホク系”なのに対し、ひかり姫は“プリッと弾ける食感”。とても香ばしい風味を持ち、ひと口目から旨みと甘みが広がります。実際に現地で食べたとき、あまりの香りの良さと後を引くコクに「止まらなくなる枝豆」と実感しました。分析でも、ひかり姫は糖度・旨味成分ともに丹波黒と同等、もしくはそれ以上の食味評価を獲得しています。

また、とても実入りが良く、粒もふっくら大きいのが特徴。美しさ・香り・甘み・食感のバランスが高次元で揃った、まさに“才色兼備なお姫様”。生産者たちの丁寧な栽培と、恵まれた自然が掛け合わさることで、“秋に絶対食べるべき枝豆”です。

ひかり姫の美味しさを最大限に引き出すには、「茹で方」が鍵です。まず莢を洗い、泥や汚れを落とします。たっぷりのお湯を沸騰させ、温度を下げないよう多めに用意するのがポイント。枝豆を入れて約10〜12分茹でます（硬めなら短め、柔らかめなら長め）。茹で上がったらざるにあげ、少し冷ましてから塩を振ると、香りと甘みが引き立ちます。塩味をしっかり付けたい場合は、茹でた枝豆を3％の塩水（500mlの水に15g塩）に数分浸す方法もおすすめ。

また、冷凍する場合は茹で時間を5分ほどに短くして粗熱を取り、水気をよく切って保存すると、風味が長持ちします。ひかり姫は枝豆としての完成度が高いため、シンプルに茹でるだけで十分に美味しいですが、キャンプ飯で豪快に塩茹でしたり、サラダやパスタの具材として使っても存在感抜群。一度食べると“普通の枝豆には戻れない”贅沢な味わいです。