椋田敏行さんは、鳥取県東郷の地で代々三代目になる梨作り名人。鳥取県東郷は梨の栽培開始から100年以上の歴史を誇っており、二十世紀梨の生産量は日本一です。品質が高く瑞々しく甘いため、市場では「東郷梨」のブランドで高値取引されています。

その中でも旧東郷町は、鳥取における梨づくり発祥とも言える地です。ここで先祖代々受け継がれる梨の樹を守りながら、椋田さんは梨を作られています。

「梨が完熟となり、糖度が十分にのるまで出荷しない」というのが椋田梨園のこだわりです。通常、早く出荷すれば高値がつくのですが、椋田梨園は市場には出荷せず個人の直売のみのため、このこだわりを守り続けています。

椋田梨園には樹齢百年を超える巨木が生き続けています。今でも毎年、美味しい梨を実らせます。椋田梨園が先祖代々梨の樹を大事に育て、伝統を守り続けてきた証ともいえます。

長く樹を守るためには、きめ細やかな整備が欠かせません。梨園には登るだけでも大変な急斜面がありますが、隅から隅まできれいに整備されていて、大事に梨が育てられています。

一番急なところでは、前に手を着くくらいの急斜面。上には梨の枝が広がっているので腰はかがめないと歩けません。この状況での作業は想像を超えるつらさだろうと、登るだけで実感します。

実がなれば、これに一つ一つ袋をかけていく作業があります。それも袋を１回取り替えるため、２回も袋をかけます。美味しい梨を作るために、気が遠くなるほどの作業を繰り返されています。