岐阜県郡上市石徹白（いとしろ）の地に根を張る「サユールイトシロ」。園主の稲倉さんは2005年より、無農薬・無肥料の自然栽培に取り組んできました。農業の道を選んだのは、石徹白に移り住んだことがきっかけ。自然環境の厳しい中山間地であっても、「この地だからこそできる農業を」と考え、あえて自然の摂理に従った栽培方法を選びました。

豊かな自然と歴史が息づく石徹白で、地域資源を最大限に活かす生き方と農の在り方を体現している稲倉さんの取り組みは、多くの共感と信頼を集めています。

サユールイトシロでは、全圃場で無農薬・無肥料の自然栽培を実施しています。外部から肥料や堆肥を一切入れず、土地が本来持つ力と気候、水の流れに従って野菜を育てる。それがこの農園の哲学です。加えて、自家採種にも注力し、固定種や在来種を守る姿勢も貫かれています。

肥料を使わない理由は、単に安全性の問題ではありません。稲倉さんは「過剰な化学肥料が雑味や苦味の主な原因」と考えており、「水と土を汚さない」というポリシーこそが美味しさの原点であると語ります。ズッキーニやナス、ピーマンなどの夏野菜から、枝豆や大根などの秋冬野菜、さらにはメロンなどの果物まで、多様な作物を少量多品目で育てるのも、自然との対話を大切にしているからこそです。

ころたんメロンは手のひらサイズの小玉ながら、糖度は15度前後に達することもあり、凝縮感のある甘みが特徴です。自然栽培ならではの澄んだ後味が心地よく、多くのメロンにあるような喉に残る刺激がなく、すっきりとした余韻を楽しめます。果皮は黄金色、果肉は鮮やかな緑色で、見た目にも美しい仕上がり。厚みのある果肉と少ないタネ部によって食べられる部分が多く、満足感も高いのが魅力です。

稲倉さん自身も自然栽培ではかなり挑戦の作物ですが、その出来栄えには確かな手応えを感じています。自然の摂理に委ねる農法だからこそ実現した、清らかな甘さと軽やかな味わいのメロンです。